丸山康彦さん(不登校・ひきこもり相談室・ヒューマン・スタジオ所長)
インタビュー
丸山さんへのインタビューは二度目であり、今回掲載の内容の前、2016年1月に横浜にて行っている。その際、収録レコーダーの音声を消去してしまったため、同年4月16日に行われた「ひきこもりUXフェス」の翌日に改めて再インタビューを試みた。二回目のインタビューは実践支援の哲学をじっくり聞いた密度の濃い内容で、不登校・ひきこもりの問題に関係する人たちに是非とも読んでもらいたい話を聞けている。ぜひ多くの人にこのインタビューを参照していただきたいと強く願う。(2016年12月31日)。
UXフェスの新しさ
丸山:先日行われたUXフェスなんですけど、あれだけの規模というのはちょっとまれだと思います。
杉本:400人もの集客ですもんね。
丸山:ええ。不登校関連の進路相談会とか、ひきこもり関連でも複数の団体が一緒にやるイベントとか、それからこの青少年センターで毎年やっている「フリフリ・フリマ」。去年からは「フリフリ・フェスタ」と改名してやっているんですが、いわゆるお祭りですね。だいたい20近い団体が一緒にブースを並べて物販をしたりとか、あとは出し物をしたりしてるんですけれども。あらゆるそういうものを超えるような。すごく内容も多様だし、それからブースを並べた団体も実に多様でしたね。
杉本:そうですよね。パンフレットを見ましても。ずいぶん本格的でした。
丸山:進路相談会だったら参加団体が中学卒業とか、高校中退後の進路という範囲に限定される。で、「フリフリ」だったら、ここに登録している団体の中でやっていますから、不登校・ひきこもり関係団体がほとんどなんです。ですからUXフェスの場合は枠に収まりきれないような、いろいろと、本当に”かすってる”団体といいますかね。ウチの場合は元々いままでの目的での対象団体だったんですけれども、先日は目的からして、「(ひきこもっている人も)来ますよ」みたいな団体が含まれていて。それはすごいこと。
枠がぼやけて、もうちょっと枠の外、周辺の団体も含めて参加していた。交流スペースも恋愛に関する、ひとりぼっちのね、そういう集まりがあったり。だからあれはこれからの可能性というか、あるべき形。僕はもう大人のひきこもりに関しては、あのように分野とかを気にしないで、どんどんネットワークが広げていったほうが支援としてはいいんじゃないかと思っています。
杉本:僕は少し遅れていったので、お話は聞けなかったんですけれども、トークステージのほうで性的マイノリティの人たちの話も組まれてましたよね?それがいかにも先進的というか、現代的な課題が含まれているなという風に思いましたね。あと、僕は基本的にトークステージ中心になっちゃったんですけども、「働く」テーマについても、*泉谷閑示さんの話もそうなんですけど、ひきこもり話というよりもっと広いですよね。泉谷さんの話に至ってはもはやひきこもりに限定されてないというか、普通の人が生きる悩みにも共通するような問題に展開していたと思うので。「ひきこもりUXフェス」ということにはなってはいるけれども、「ひきこもりの人」対象というわけでもなくて、特に泉谷さんの話はもはやひきこもりの人対象の話にはなっていないなあという印象が非常にありました。
丸山:だから僕の本も。
杉本:そうですよね!
丸山:僕の本の感想でも結構普遍的に誰にとっても関係のある内容だ、という声はいただくんですよね。
杉本:そうです。僕も前、お会いしたときはうまく説明できなかったですけど、自分の両親のこともね。呆けはじめた親のかかわり考えたときに、「こういう対応をしてはいけないな」ということをついついやってしまうんですよね。そういう風に自分の問題として逆に照り返されるように思う本でもありましたから。ですから、よく思うことなんですけれど、「ひきこもり」というテーマでやっても深くつっこんでいくとひきこもりという問題を超えていく何かがあるな、という印象が非常にするんですよね。大げさに言ってしまえば哲学的なテーマまで行ってしまう気がするといいますか。特に泉谷さんの話はひきこもりにこだわるテーマではなかったので。
*泉谷関示ー1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。精神科医。大学時代に音楽理論や作曲法の個人教授を受ける。東京医科歯科大学医学部附属病院、財団法人神経研究所附属晴和病院等に勤務したのち渡仏、パリ・エコールノルマル音楽院に留学。同時にパリ日本人学校教育相談員を務めた。帰国後、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京・広尾)院長。また、舞台演出や作曲家としての活動も行っており、「横手市民歌」等の作品がある。著書に「『普通がいい』という病」(講談社現代新書)など多数。東京工科大学兼任講師。(ウィキペデアより)