不登校の子の日常

杉本:先ほどの「生活」の話ともつながるかもしれませんが、実は僕、最近まで全然知らないことがあって。いまの不登校の子たちって日々をどう過ごしているかということでいえば、実はフリースクールに通っている子というのは1パーセント弱しかいないというのを聞いたことがあって。「えそんなにいないんだ」と思ったんですね。まあお金がかかるっていう問題が一番大きいらしいので、通っている子はそんなにいないという話らしくて。あと、僕も良く知らないんですけど、「適応指導教室」っていうものがあるんですか?それはやっぱり不登校の子を適応させるためのものとして

 

丸山:そうですね。元々は学校に来れないんだったらちょっと来やすい所を作ってあげてそして最終的にはそこで要するに練習、学校に行く練習みたいな場所ですよ。

 

杉本:練習ですか(笑)。それってどれくらい前から生まれたものなんでしょうか。

 

丸山:適応指導教室は相当・・・

 

杉本:昔からですか?

 

丸山:90年ごろだったかなよく調べていないので。

 

杉本:それで結局ほとんどの子が要するに自宅中心の生活をしているのかなあ?と思ったんですよ。そういう理解でいいんでしょうか。

 

丸山:いいと思いますよ。

 

杉本:そうすると僕の思春期の頃とおんなじで、いわば「不登校のひきこもり」状態、いえ、ひきこもり状態の子ばっかりかどうかはわかりませんが。なかなか、そもそも昼間10代の子が出歩くというのも厄介なことが多いですよね。どういう風な過ごし方をしていると見ていますか?多数の子が家にいると思うんですけど。

 

丸山:まあ、いまはインターネットとかゲームとか動画とかとにかく家にいても時間をつぶすものは沢山あるので。そういうことをやっている子は多いと思いますね。

 

杉本:なるほど。

 

丸山:だから僕の時代だったらテレビくらいしかなかったので。でね。昔はひきこもりという言葉がなかったのは、それは不登校状態になると100パーセントひきこもってたからだと思うんですね。

 

杉本:そうでしょうね(苦笑)。

 

丸山:何もひきこもりという言葉が必要なかったと。それが証拠にいまは「ウチの子は学校に行ってないけど、ひきこもってはいない」みたいな言い方をされる。あるいは「学校に行かないでひきこもっている」というそういう二通りの言いかたを不登校の子の親御さんはするということがありますね

 

杉本:うんうん、なるほど。

 

丸山:だからそれだけちょっと世の中がゆるくなったかなというのもあって、それは昔はですね。学校行ってない子がせめて自分の好きな事で習い事をしたいと。で、習い事の教室に申し込みに行ったら学校に行ってないんだからこっちにも来ちゃダメだと。門前払いを喰った、という話もあったんですね。

 

杉本:昔はそんな空気、ありましたよね。

 

丸山:はい。でもいまはそんなことはほとんどないですよね。ですから割と学校には行ってないけれども、お稽古事に行ってますよとか、あるいは放課後友だちと遊んでいますよとか、休日は外出していますよとか。そういう話はよく聞きます。

 

杉本:じゃ、昔よりは思春期。僕は70年代の終わりだったんですけど、その頃は昼間外に出てるとか、学校に行かないで外に出てるということの世間の目の厳しさはだいぶ薄らいでいる感じはありますか。

 

丸山:はい。

 

杉本:それでもやっぱり真昼間とかは出にくいでしょうねえ。

 

丸山:そうですね、はい。

 

杉本:まあそれで親御さんは了解しましたという物わかりの良い親御さんも結構いるんだと思うんですけど、ただ当事者のお子さん自身の心境とかを考えるに、焦りとか。何か葛藤を抱えながら日々を過ごしている子も多いのかな?という気もするのですが

 

丸山:それはそうです。こういうことが出来ているから自分は学校へ行かなくてもいいんだとか、そういう風に思っている子どもはほとんどいないと思います。だから最終的には学校に戻りたいとか、進学したいとか、そういう風に思っている。だから中3の進路選択の時期までにエネルギーがある程度回復してきた子は、割と進路選択も無理なく自分にあった進路を選んでその後はうまく行くみたいですよね。エネルギーの回復が間に合わないとちょっと進路選択に無理がある。そういうことが生じたりするので、中学卒業後もまた一進一退みたいなこともあるようですから。

 

杉本:丸山さんの不登校の子とひきこもりの子の親御さん相談は比率的にはどれくらいの割合なのですか?

 

丸山:いまは多分半々くらいだと思いますね。

 

杉本:半々くらいですか。どうでしょう、ひきこもりの人のほうが難しい印象ですか?

 

丸山:ええ。それはね、年齢のことはやはりあると思いますね。10代というのは変化と成長の時代といわれますけど、もう、その通りだと思います。ある程度まで本人の状態がよくなると現状維持で、現状維持を周りがきちんと心がけていると、本人のほうが勝手にさらにステップアップしていくんですよ。それは10代の特徴かなと思うんですよね。

 

杉本:強みですよね。

 

丸山:はい。

 

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