一貫して子どもの側に立つ
杉本:で、不登校新聞という名前を掲げている新聞としてですね、おそらく時代もひきこもりという問題は不登校と同様、社会問題として大きくクローズアップされてくる時代でもあったので、不登校及びひきこもり両方を兼ね備えた記事を作るというのは決して不思議なことではないと思うんですけど、他の関連するスタッフさんとか、発行する側の人とか。あとは関わっている、「子ども若者編集部」の子たちにとってひきこもりというイメージ。「自分は不登校であってひきこもりではないよ」とか、あるいは大人側で言えばひきこもりの問題は「不登校新聞で取り上げるメインなのか?」とか(笑)。今は全然不思議ではなくなってきていて、もう不登校もひきこもりも取り上げる不登校新聞という認知はされていると思うんですけど、当初はどうだったのかなあ?と思うのですが。
石井:どうだったでしょうね。その2000年代半ばの頃に必死で取材を積み重ねてきたのはまさに若者問題でしたね。雇用が不安定化する、ニートという言葉が流行っていく。一方で、そのことを問題視する風潮もある。「一体何が起きているのか」と取材をしました。10年ちょっと前の記事ですから、いま読み返すとたいへん文章が稚拙です(笑)。ただし、取材量は今と比べれば段違いです。今より綿密に取材していました。その思いが紙面に少し出すぎてしまい、ニート、ひきこもりの問題にあまりにフォーカスしていって、やはり十代の子を持つ親としては「ちょっと早いなあ」と思われたのかもしれません。実際に「子どもと学校との関係の話が少ない」というご意見をいただいた記憶もあります。
杉本:そうですね。まあ読者が14歳から17歳ぐらいの親御さんたちでしょうから。ちょっと早かったかもしれませんね。
石井:そうですね。現実問題として認識するにはね。
杉本:あの~、その頃になって部数的にはどうなんでしょうね?
石井:部数に関しては98年を頂点としてずっーと落ち続けています。とくべつにそのころに部数を落としたというわけではありません。
杉本:じゃあ私も何らかの形でその情報を知ってその最初の年の実売6000部のひとりとして購入したんですね。
石井:そうですね。
杉本:。どこで知ったんだろうなあ?不登校新聞。だって6000って言ったら結構でしょう。
石井:そうですね。創刊当初は30社ぐらいが集まる記者会見を開いたとも聞いてます。私は子どもだったのではたで見ていただけですが、当時は、問い合わせの電話が多くて、本当に鳴りやまなかったと聞いています。
杉本:注目されてクローズアップされるというのは、たいがいその後が(笑)
石井:(笑)そうですね。ただし、子どもの側に立つ、当事者の側に立って考える視点は、いまも当時もまったく変わっていません。問題を伝える「切り口」に関してはずいぶん変えてきたという認識はありますけれどね。具体的には読者が聞きたいと思える質問を記事のテーマに据えていく、ということもやってきました。たとえば、当事者に直接「将来のことは考えてないんですか?」と聞く記事を増やしたりとか。
杉本:あ~はい。
石井:親が直接聞きたいけれども、やっぱり聞けないことをテーマにしていく。それをこの新聞ではやっていくんだ、と。そこに焦点を当てれば、ふつうの新聞とのちがいも明確になるし、興味を持ってもらえる人はいると思うんです。「あ、私が聞きたいことだ、これは自分に向けて届けてくれる」と思っていただけるんじゃないかなと。
杉本:方針は一貫して変わってはいない?
石井:いないですね。
杉本:編集長になられた頃、その時の記者は石井さん含めて何人ですか?
石井:このときは3名ですね。いま不登校新聞の事務局長の小熊もそのころからいました。
杉本:じゃあ、小熊さんは大学院を出ていらっしゃるでしょうから問題意識も先鋭的には持たれていたと思います?
石井:もともと彼の場合は東京シューレでボランティアをしていて、そもそも問題認識のレベルが高かったと思いますね。
杉本:若者問題に関しても?
石井:そうですね、若者問題に関してもそうですし、不登校の問題も当然そうだったですね。
杉本:現在は茂手木さんという方が事務をいま中心にやっておられるんですよね?
石井:たしかに茂手木は購読管理の統括をしていますが、事務は事務局長の小熊が中心です。ただし、事務だけ、購読管理だけと仕事を区切れるほど大企業ではないので(笑)。茂手木、小熊、私の3人も編集を行なっています。その他、非常勤スタッフや、名古屋で常勤無給で働いていただいてるスタッフもいますが、現場の骨格をつくっているのは3名です。
杉本:記者もやっているのも3人ということですね?
石井:そうです。やはり3人はいないと物理的に厳しいですね。
杉本:でしょうね。月2回出すわけですもんね。しかもインタビューが中心で…。
石井:ええ。
杉本:全起こしをしてですよね。こういう仕事としてお金をいただいて月2回インタビューを一面に載せて、って本当に大変だなと思うんですけど。
石井:ありがたいです。そう言っていただけると。
杉本:労働基準法守れないのではないですか。常勤さんの人は?
石井:いえ。基本的には守ってます。「定時では帰りましょう」という雰囲気は守ってます。
杉本:石井さんご自身も?
石井:そうですね。
杉本:凄いですね。やろうと思えばやっぱりそれはできるものですか。
石井:しないとあんまり良くないですよね。
杉本:そういうところ、やっぱりスキルがあるんですね。
石井:いやいや。