自助会について
杉本:昨日のUXフェスでの出張自助会でも冒頭に言ってたと思うんですけど、アレなんですか?こういう会議室でキチンとするんじゃなくて、みんなシートか何かの上に座って話すみたいな感じなんですか。
近藤:そうそう。そうなんですよ。
杉本:面白いなと思って。ちょっと聞き取れなかった部分もあったんですけど、「ああ、そうか~」と思ったんですよね。
近藤:もともと和室だったんですよね。
杉本:あ、和室。いいですね。
近藤:和室で、ぴしゃっと閉めれて、下駄箱があって、で、その下駄箱に靴入れて、靴下になる安心感というのがちょっといいんです。
杉本:うんうん。わかりますね。
近藤:それが自然とこう、くつろぎやすい。で、ペタンと足を伸ばせる。それが良いと思っていて。で、その和室の借りていた施設が閉まったあとに、別の施設に移るんですけど、机があって座ってやってみたら何か「朝まで生テレビ」みたいな空気になりがちだったというのがあって。何かこう議論ぽくなるなと。
杉本;ああ、議論ぽくなるか。なるほど。
近藤:で、けっこう議論ぽいのが好きな参加者もいるので。
杉本:(苦笑)私もそうですけど…。
近藤:僕もそういうの、好きなんですよ。好きなんです。でも、自分が好きでなおかつ場の環境もそれっぽくなるのが向いてるとなると、主催者も好き、環境もそれに適していると偏ってしまう。
杉本:そうねえ。そうすると来にくい人が出てきちゃいますよねえ。
近藤:そうです。ならば環境のほうは茶飲み話になりやすほうへ寄せたいと。
杉本:なるほど、なるほど。
近藤:で、こちらのほうに来てもババッとマットをしいて、マットの上にざぶとんをかぶせて円陣で、という。で、真ん中におやつ置いてという形でやってるんですけど。
杉本:なるほどわかりました。で、やっぱりあれですか?近藤さんが初っ端に出た自助会で受けた有り難みというものの継続で、自助会は大事だという。それとも何か自助会続けて自分の中で何か変わってきたかなあ?やっぱり世話人として今後続けてかなきゃあみたいな。ニュアンスの変化とかありました?
近藤:う~ん。
杉本:それとも一貫してるかな?どうでしょう。
近藤:自分の個人参加のとき、やっぱりいいなと思ってたんですけど、続けていくと、「いいな」という思い方が今までの自分と違う感じでいいなと思うことがたくさんあるわけですよね。一回参加されてからしばらく来なくて、で、2年後くらいに2回目に来て、「まだ残っていて凄いよかった」っていう。で、すごくこう、もう何かホッとするんですと。参加してないけど、見てるんですと。ああ、それもそうなんだなと。何なんだろう?それは会合の中もそうだし、何かやっていた記憶を思い出として残していて、ずっと何となく故郷じみて感じてくれている人もいるんだな、と。そういうのもあるし。あと、ここで何か話すために普通に生活してる中で何かこれを話そうと思うきっかけみたいなものが日常生活の中に楽しみとしてできました、という話もあって。「ああ、なるほど」と。
今後の関心事
杉本:なるほど。自助会について中心に話を聞いたんですけど、どうですかね?近藤さんの今後なんですけど。まあまだ若いし、就労の道も諦めたという年齢でも全然ないし、何だろうね?今どういう風に未来像を。あるいはとりあえず今日明日を大事にするような感じでいるのか。もうちょっと遠くを見ているのか。そのへんの辺りを。
近藤:そうですね。何かSTEPの世話人やる頃に、今まで一緒にやってた人が降りて、ひとりになるそのタイミング時はやっぱりちょっと不安だったんですね。なので、このセンターでひきこもりと不登校の若者に接して支援するボランティア養成講座みたいなのがありまして。いちおう接するときのノウハウがあるんだったら聞くだけでも聞かせてくださいと言って申し込んだんですね。そのとき不登校の話とかいろいろあって、あるおばちゃんがずっと訪問していていつもこう、押入れに入っちゃう。
杉本:ん?
近藤:子どもを訪問するんですけど、訪問すると目当ての子どもさんが押入れの中に隠れちゃって。言葉がけをしても返事がなくて、でも「また来るからね」というのを半年とか繰り返して、で、ある日「また来たわよ」「こんにちは」って言ったら、押入れの中から「しつけえんだよ!クソババア!死ね!」って声が聞こえて。で、「ああ」って。やっと言葉を返してくれた、私嬉しくて、って。
杉本:(笑)ははは。それはまずいでしょう?
近藤:何ていうんだろう?ちょっと自分が住んでいる日本かな?っていう(笑)
杉本:(爆笑)。
近藤:(笑)で、こんな、何ていうんだろう?
杉本:すごい勘違いだよねえ。それは。
近藤:すごい何か。自分の住んでいる日本の出来事か?みたいな。
杉本:ははは(笑)。
近藤:そう思ってですね。でも何かやっぱり異文化だけど海外、みたいな。やっぱり家庭と家庭でその、本当に何というんだろう…。「近くにあったところの圧倒的な世界の違い」みたいなものを感じたんですね。
杉本:それはありますね。わかります。ほとんど通じない、というね。
近藤:で、またそういう世界があって、それに訪問できるというのは不謹慎かもしれないけど、何か旅行みたいな贅沢だなって感じたんですよね。そんなに違うのがあって、で、自分が同じようなミッションを迫られたときに、さあ私はおばちゃんと同じような任務を与えられたときに、どういうようなリアクションをしたり、どういうような対応をするかな?と。俺なら何を考えるかな、と。ちょっとそれも気になるなと思って。で、最初その、ひきこもりの青年と不登校のボランティア養成講座だったんですけど。それ聞いて、まあ不登校というのも興味の対象に入ってきたんです。
杉本:なるほど。
近藤:で、あの、フリースペースの学習支援みたいな不登校の子が多いところのボランティアに申し込んだんですね。で、そのボランティアをしているとき、やっている人がみんなおじいちゃんおばあちゃん。元教員のおじいちゃんおばあちゃんが多くて、日給、6時間~8時間働いて500円(笑)。
杉本:ほお~。完全ボランティアだなあ。
近藤:完全ボランティアなんですね。でもまあそれが「ああもう、おばちゃんたち何ていうか、うらやましいなぁ」と思って。もうこの人たちは勝手にあくせく動いて、「あ、こんなことしてみよう」「あんなことしてみよう」と言って。生きてるんだなと思って。で、それはどうやってできてるんだろう?と思ったんです。それはやっぱり今までに経験した蓄積があり、好きなことがあって、好きなスキルでやっていくのがあって、完璧な報酬は「経験と身体に入る」。その蓄積がうらやましいと思ったんですよね。で、それがひとつ、今後の方針というか、それをけっこう思いましたね。何か自分も「定年なしで行きたいな」と。いま定年しないというか、もうすでに定年して、そして定年なくやりたいなと。
杉本:いまから定年して、今後も定年なく、と。
近藤:あなたは仕事の任期、今日までですと。で、まだやりかけなんだけども、定年なので引き継いで、という。そういう仕事のあり方ではない形で何とかやっていきたいですね。
杉本:そういう仕事のあり方ではなく、ということですね。新しいですよね。
近藤:そこでデスクと椅子を片付けておしまいにならないものを。
杉本:うん。
近藤:したい、と(笑)。
杉本:なるほど。う~ん、なかなかね。ちょっといろいろ考えなくちゃいけない要素もありそうだけども。うん、うん。
近藤:何かそういう生活、成り立たせることと、これからどう両立していくんだろうなというのを。
家庭教師として見えてくること
杉本:いま家庭教師されてるじゃないですか?何人くらいの子を教えてるんですか?
近藤:いま9人です。
杉本:あ、9人も?一月に9人?
近藤:一月9人。
杉本:えっと、どれくらいの間隔で一人の子を教えてるんでしょう?
近藤:まあ、だいたい確実にいるのが1時間半くらいなんですけど、9人で週に2コマ入れる子もいるので、で、14か15コマくらい。で、日課が3軒か2軒なんですね。1日まわるのが。
杉本:ほうほう。毎日?ほぼ。
近藤:そうですね。月から金までほぼ毎日ですね。
杉本:ほう~。じゃあ1日3~4時間?
近藤:でも月曜は空いたりすることもあって。
杉本:そうですか。でも家庭教師というのもねえ。まあひとつの家に入ってお勉強を教えるわけですけど。いろいろあるのかなあ?という気もするんですけど。
近藤:やっぱりそうですね。いろいろありますね。実際の進路とか、やっぱり昼間からやるというか、午前中から行くとみんな不登校の子だから。
杉本:ああ~。なるほど。不登校の子を教えに行ってるわけね?
近藤:そうですね。放課後の時間になると、不登校じゃない子も教えてるんですけど。
杉本:そちらは普通のパターンですね。そうするとやっぱり気を使う子もいそうですね。まあそれもひとつのね、なんだろう?近藤さんの夢と繋がる勉強のひとつかもしれませんね。そういう子との付き合い方とか。
近藤:う~ん。
杉本:学習を教える。まあ、教えることだけがメインだということでもないと思うんだけども。きっと付き合い方としてはさ。まあ親御さんとしては学力がアップというのは当然目標として。
近藤:でもけっこう親御さんもいろんな要望があって、何かその、親御さんと子どもの間は国交は断絶してると。外交は断絶してると。
杉本:ああ~。外交断絶してて。
近藤:で、外交官がほしい。接続し続けてくれれば何人かでも続けられると。で、接続し続けてくれることを第一にしてお願いされる、みたいなこともやっぱりあったりしますね。
杉本:不登校の子の場合は学習という目標があるからね。アウトリーチ的なかかわりもお金をもらってできるけど。これが学習期間が終ってひきこもりになると本格的なアウトリーチということになっちゃって(笑)。何かすごく重たい、重々しい雰囲気になっちゃって。何かひきこもりの人の家庭教師ってあると面白いかもしれないですけどね(笑)。もう大学終ってるけどなお家庭教師、とかさ(笑)。
近藤:やっぱり生徒によってはほぼいっさい勉強しない期間が長い。で、お互い接しててもとりあえず一回勉強を棚上げする期間、いま教科書など開こうものなら2回目に行けないぞ、というのもけっこうあるんですよ。それが多いかというとそんな多いわけではないんですけど。そういうケースはあって、そのような子は教科書開くまでに、「よ~し開くか」と僕が聞いても、「やめろよ」「やだよ、やりたくねえよ」と言っても開くということをしても断絶しない。そういう分厚い信頼関係を作るまでにすごい時間がかかったりもしますね。
杉本:そうか~。とりあえず勉強してくれなくても、とっかかりとしていて欲しいというニーズを持つ親御さんもいますかね。
近藤:います。それはもう、そこに行くまでに本当に親子関係がものすごく悪くなってて、もう口が聞けないというか、様子が分からない。
杉本:う~ん。妙な言い方ですけど、そういうの得意でしょう?近藤さん、きっと。
近藤:まあ~。
杉本:普通の、「教えるぞ」タイプの家庭教師の人よりは。おそらくね。
近藤:気は長いですからね。
杉本:ねえ。というかそもそもひきこもりの人と接点が多いわけだから。おそらく家庭内断絶みたいなものが起きているのは特殊だとは思わないと思いますのでね。